両思い、なんて夢のまた夢で
時間がたてばたつほど、どこかで諦めていて
・・・「その先」のことなんて全然考えられなかった



「・・・・だからって、普通ここまでになるもんかぁ?」



香は盛大にため息を吐きながらソレを手に取った
それは特に何の変哲も無い・・・
むしろ見慣れすぎるほど見慣れてしまった『僚のシャツ』だった

普段なら「またこんなところに脱ぎ散らかして!!」と思うところだが・・・
いかんせん、今香がいるのは風呂場の脱衣所だった
しかも香はちょうど風呂からあがったばかりで、「さぁ、着替えようか!」としたものの
先ほどまであったはずの自分が用意したパジャマの姿はどこにもなく
「代わり」といわんばかりにこの1枚のシャツと下着だけ残されていた



「・・・・ほんっと、何考えてるんだか・・・・」



盛大なため息をつきながら香は途方にくれる
そして、無駄だろうなぁっと思いながらも
なんとかこの現状を打破する術(すべ)を探るべく頭を必死に動かしていた

お風呂場へ繋がる僚の覗き用ルートは完全に封じてしまった
もし、まだ使えたとしても自分の今の姿であそこに潜り込むのはいささか勇気がいる
窓から外に出ることもできるが、これも今の現状を見ればそんなことできるはずもなく
下手すれば、誰かに見られてしまう可能性もあり、香は再びため息をついた・・・


「・・・・今日こそはゆっくり寝れると思ったのに」


かれこれ数十分この現状を打破しようと頑張ったものの、どうにもいいアイディアが浮かばず
香は諦めのため息つき肩を落としつつ、なぜ自分がこんなことで悩むはめになったのかと
ちょっとだけ遠くを眺めた・・・


両思い、なんて夢のまた夢で
時間がたてばたつほど、どこかで諦めていて
・・・「その先」のことなんて全然考えられなかった


だが、いざ「その先」に立ってみると、そこに居たのは、180度違う男の姿だった
外では相変わらずナンパだなんだと騒いでいるが、いざ2人きりになったり
こうして夜の時間になると、今まで香に一切見せてこなかった「男」の表情をこれでもかと見せるようになっていた

それを如実に表すのが鏡に映る自分の肢体で
散らばる赤い華たちがあの男がどれだけ香を「愛した」のかを雄弁に語っていた


「ほんと・・・何考えてるんだか・・・・」


美しく咲き誇る華の一つを鏡で眺めながら、そっと自分の指でなぞれば
香は無意識の内にほうっとため息とも感嘆ともつかぬ吐息を吐き出した

僚に愛されるのは、正直・・・嫌じゃない
だが、翻弄されるは常に香で、それが香にはたまらなく悔しかった

そりゃ、まだまだ初心者な香ともはや達人レベルの僚とでは、比べるのもちゃんちゃらおかしいということぐらいわかってる
同じ土俵に立つことすらまだまだなことも十分理解している
・・・・それでも、こうも自分ばかりが翻弄され続けるというのは・・・やはり不公平な気がしてならなかった


「っていうか、どんだけ変るのかって話よね・・・あんだけ『唯一もっこりしない女だ』なんだって言っておきながら
あれから・・・ほぼ、毎日・・・・なんて・・・・」


真っ赤になりながらブツブツと文句を呟き
香は下着を身につけると、しばし逡巡した後、僚のシャツを羽織った
ただし、ボタンはピッチリと上まで留め、袖も何回か折って多少動きやすくしてみる
一見すると、ミニのワンピースに見えなくもないのだが、下は下着のみという点にかなり不安を覚えた






「たまには、一人で休みたい・・・って言ったら、こんなことするし・・・どんだけ変態エロ親父なわけアイツはっ!!」


文句は徐々にこの理不尽な状況を作った男への怒りへと変っていき
せめてこのままあの男に捕まるのだけは避けよう、ていうか逃げ切ってやるっ!!っと堅く決意すると
香は勢いよく脱衣所の扉を開け走り出そうとした・・・・・が・・・・


「ぉ、なかなか似合ってるじゃないかカオリくん、んじゃぁ、早速リョウちゃんの部屋で鑑賞しましょうねぇ〜♪」


捕まった
扉を開けた瞬間、気配を消して堂々と待ち伏せしていた男により香はあっさりと捕まり
そのまま文句を言う暇させ与えず、ひょいっと荷物のようにして担がれた


「んなっ!!な、な・・・・なんっ!!?」

「おまぁの行動がわからないオレだと思うか?ん?」


あまりの展開に言葉がまともに出ない香に
僚はニヤリと笑みを浮べて、スキップでもしそうなほど上機嫌に香を自分の部屋へと運んでいく


その笑みを見た瞬間、香は自分の愚かさを呪った
むしろ自分の馬鹿さ加減にガックリと肩を落とし
そのまま、「なんで、大事なことを忘れるかなあたしはぁあああ!!!」っ絶叫したかった

それぐらい綺麗サッパリ、スッコーンっと哀れなほど忘れていたのだ
夜の行為はもちろん、裏の仕事の技術も、戦略も、心理戦もなにもかもまだまだこの男に敵わないということはもちろん
・・・・・この男が『自分をからかうことに関しては三度の飯よりも好き』なのだという、ある種最悪な趣味の持ち主だということを・・・


「は、離せ変態!!色魔!!エロ親父のもっこりばかぁあああああ!!!!」

「変態で色魔でエロは認めるが、親父じゃねぇつってるだろうが・・・それとも親父っぽくねちっこい方がカオリンはお好み?」


それでも、せめてもの抵抗をっ!!とばかりにジタバタと暴れ、あえて僚を怒らせる言葉(ワード)を口にするが
僚の歩みは止まることなく、あっと言う間にリョウのベッドの上へと放り投げられ
逆に香をさらなるピンチへと突き落としていた


「あー・・・たまんねぇ」

「やっ・・・・りょ・・・や、やめっ」


ジロジロと遠慮のえの字も無く舐めるように僚に見られながら、慌てて香は体勢を整えようとする
・・・が、それを許す僚ではなく
放り出されたときにはだけたシャツから伸びる白い脚をガシっと掴むと
その脚を下からゆっくりとなぞりあげ、太股までくると、まるで包み込むように撫でまわした


「俺はエロ親父らしいからなぁ、親父は親父らしくねちっこく攻めてあげようと思ったんだが・・・
香ちゃんはご不満なわけ?」

「ば、ばかっ!!だ、だれも、そんなこと頼んでなっ・・・あっ!!!」

「それとも・・・・いつもよりも激しくオシオキされたい?」


わずかに荒くなった愛撫に香はビクッと体を震わせると必死に首を左右に振った
普段でさえ一杯一杯なのに、これ以上激しくなどされたら本当に自分が壊れてしまうような気がしたし
何よりも本能が危険だと叫んでいるため、香はふるふると震えながら拒絶する

その姿はまさに僚の中の嗜虐心を煽るのに十分だったが
まだまだようやく自分を受け入れることができるようになった女には酷だろうと判断し
『今日のところ』は勘弁してやるかなぁ〜なんて考えつつ、香の快感を引き出すように撫で回す


「んじゃぁ、おまぁはどうされたいんだ?・・・・あ、もちろん今更やめるなんつー可愛くないこと言ったら、即オシオキな♪」

「・・・・っ!!・・・・ず、ずる・・いっ」


逃げ道を与えているようで、しっかりとふさいだ上で自分に言わせようとしている男に
香は内心「どS!サド!!変態っ!!!」と叫び続けつつも
人間こうも変るのか・・・っと妙な感心をしていた
できることなら、一線を越えられずに悩んでいた頃の自分に現在の状況を伝え
「覚悟しておくのよっ!!」と言いたいのだが・・・・もちろん、そんなことは無理なわけで・・・


「ひゃっ!!なっ、なに、してっ!!?」

「この状況で別のこと考えてるとは・・・まだまだ余裕みたいだなぁ、カオリちゃん?」


僚は自分とは別のことを考えている香がおもしろくなく
耳を軽く噛んで再び意識を自分へと向けさせる

一瞬でもその目から自分が消える
思考が別のことで埋まる・・・
たったそれだけのことで、先ほどまで押さえられていたはずの嗜虐心が再び暴れだすのを感じ
僚は香にはわからないように内心苦笑した

----- 溺れてるな、しかも、とんでもなくズブズブに・・・

経験地は自分の方があるし、技術(テク)もある
だが、本番行為の前にここまで自分をざわめかせる女など、今まで一人もいなかった

どんな格好をしていようと、どんな姿であろうと
見た目がそれなりなら多少の盛り上がりはあったとしても、十分だったというのに

たった一枚、自分のシャツを着たシンプルな姿にどうしようもなく劣情を煽られる自分いる


(・・・ったく、すごい女だよ、おまぁは・・・・)


目の前で驚きに目を見開いてる女に向って、一瞬だけ微笑むも、すぐにその笑みは「にやり」という効果音がつく
香を怯えさせるものへと変化し、ゆっくりと顔を香へと近づける


「おまぁの態度によっては優しくしてやろうと思ったんだが・・・・その必要はないみたいだし〜?
まぁ、まずは俺を『親父』呼ばわりしたことについてたーーーっぷりと反省してもらいましょうかねぇ」

「へ、い、いや!ちょっとまって!!ひゃぅっ!!あ・・・そん、な・・・・や・・・んうっ!!」


香はようやくせっかくの『チャンス』を逃したのだと気づいたのだとわかったが、あえて気づかぬフリをし
慌てて弁明をしようとする口を、タイムアップといわんばかりに塞いだ


(・・・今は俺に『慣れて』もらうのが先決だし〜?慣れても絶対に言ったりしねぇけどな)


「・・・・心配すんなって、初心者特典で優しくしてやる」

「〜〜〜〜〜〜〜こんの、ど変態っ!!」


本音を綺麗に隠し、わざと香の弱い低い声で耳元にささやきかければ
香は顔を真っ赤にして僚に罵声を浴びせれば、僚は「それこそ今更だろ?」と呟き
香の口を再び塞いだのだった



fin
-------------
以下、カフェオレさんのあとがき

すかいぷでお話をさせていただいたときに、浮かんだ妄想から・・・なのですが
ろくさんの冴羽氏目指して見事に失敗しました・・・・す、すいません(土下座)

2011/05/09


−−−−−−−−
以下、管理人(ろく)のあとがき

まず最初に、このような素敵小説を快く書いてくださったカフェオレさんに感謝いたします。
さて、きっかけは上でカフェオレさんがおっしゃっていたように、スカイプでお話しさせていただいたときに出たネタなんですが
・・・なんですかこのニヤニヤ小説は!!(興奮)
カフェオレさんにしては珍しくエロティック(笑)ですし、しかもこの冴羽氏、・・・(にやにや)(←こら)
うちのを目指しただなんてそんな恐れ多い・・・!!(土下座) しかしまあ、こんなへっぽこサイトにまさかこのような素敵小説を譲り受ける日が来るなんて、誰が予想できたことでしょう(・ω・)
そしてせっかくの小説に余計な管理人のイラストを突っ込んでしまい申し訳ないです・・・
なにはともあれ、本当にありがとうございました!





























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