出会った頃は
その大きな背中に、無意識のうちに兄貴のそれを重ねていた。

そして今は
時折見せる、一切を拒絶するような雰囲気を纏った背中を一歩後ろから眺めて、その温度をひとり想像する。

無節操にナンパを繰り返す背中にじりじりと胸が痛むのは、昨夜やけ食いして胸やけしたせいでも、何か思い病気のせいでもない。


「そんな怒るなって〜。カルシウムが足りねぇなら帰りに煮干しと牛乳でも買ってってやるから」

「そろそろ機嫌直してください、香サマ」

「・・・ほんと、仕方ねぇなあ」


あんたのせいよ。全部。

「ほら、こんなとこで泣くな。帰るぞ」


あたしがどんな気持ちで、毎日を過ごしてるか。

「香?」

「胸が痛いの」
「あ?おま、大丈夫か?」


大丈夫じゃない。

「苦しいのよ」
「ちょ、ちょっと待て今教授に連絡するから」

ジャケットの胸ポケットを探る手を制止する。

「おい・・・?」


僚にとってあたしは何?
今だにあたしは兄貴からの預かり物という位置から、脱していないの?

あたしはあたし。

預かり物でも妹でもないわ。
もう保護者ぶるのはやめて。


「・・・ん、もう大丈夫!ごめんね心配かけて!!」

目一杯の笑顔を貼り付けたら、僚の身体から少し力が抜けた。

「なんだよ、心配させんなっつーの」

さっさと背を向けて歩き出す背中に、口には出さずに投げかけた。


好きよ。苦しいほど。


それは触れてはならない気持ち。

胸の奥で、またジリリと心が焦げ付く痛みがした。













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この二人は、本人達しか知らない闇だとか、色々なしがらみが付き纏っているからこそ、そう簡単に関係を変えることができなかったのもあるんでしょうが。
やっぱりね、原作を読んでいて「何うじうじしてんのよ!」とじれったくなった人は私だけじゃないはず
時にはこうしてカオリンがひとり思いつめることもあったと思うんです。また逆も然り。

うーん、しかし
今回これを書きながら、頭の中で思い描いている二人を上手く表現できなくて、ヤキモキしました
やはりCHは奥が深い






























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