六発全てを撃ち尽くすと、手早く排莢してまた順番に弾を詰めていく。そこで馴染んだ気配を背後に感じて、熱を持った銃をそっとブースに置き振り返った。
「僚」
「勝手にここ使うなよ」
なんとも苦々しい表情に、こちらもばつが悪くなる。
「練習くらいさせてよ」
「いくらやったって上達しないもんはしないの。弾の無駄遣いだ」
「だって・・・」
「お前は別に銃が撃てなくてもいいんだよ」
「でも」
それじゃ駄目なの
せっかくパートナーとして認めてもらっても、自分で自分の身を守れないようじゃ
「せっかくいい匂いがすんのに、お前まで硝煙臭くなられちゃたまんねぇ」
そう言い背中越しに抱きすくめられる。不意打ちに身を固くしている間に、さりげなく銃を取り上げられてしまった。
どうして。
調整したローマンを渡されたのに、今だにあたしはそれを撃つことも許されていないの?
だとしたらあたしが僚のパートナーでいられる資格を、どこに見出だせばいいのか
「香。今更心配することない。銃の腕がイマイチでも、お前は俺の立派なパートナーさ」
相変わらず僚には何でもお見通しのようで、身体に回された腕に力が篭った。
「何も無理に、俺に追いつこうとしなくていいんだよ」
「・・・あたしは僚を追いかけちゃダメなの?そうやって、いつも自分ばっかり
余裕で、あたし馬鹿みたい」
もうこれ以上、自分のせいで僚に傷を増やしたくない。
毎晩見る男の身体には、無数の傷痕が今も残っている。
きっとあたしのせいでついた傷痕も・・・
だから、そのためには強くならなきゃいけないの。
僚を守る為なら、人に向けて引き金を引くことも厭わない
「・・・もうお前を置いて行かないから」
そう。
僚を守りたいだなんて、大層なこと言ってるけど
本当はこれ以上あたしと僚の距離が離れていくのが怖いだけ
肌を合わせるようになってから、強欲にも益々その思いは強くなった。
「・・・もう、置いてかれるのはたくさん」
兄貴に先立たれ、その上僚にも先立たれたら
「堕ちるときは一緒だ」
小さく相槌をして、大きな手を握りしめた。
それでもあたしは追いかけることをやめない。
これからは
少しでも二人の距離を縮める為に。
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健気とはまさに香の為にある言葉とも思えてきちゃうわ・・・
いつも一歩前を行く僚の背中を見ながら、香は何を思ったんでしょう
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